遺留分に関わる民法の特例について

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 自社株式などの承継に関する遺留分による制約の問題に対処し、現行の遺留分の制度の限界を補うため、平成20年5月に成立した経営承継円滑化法に基づき、遺留分に関する民法の特例ができました。

 この特例では、一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることで、生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎財産から除外することができます。

また、生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎財産に算入する際の評価額を予め固定することもできます。

 

※遺留分とは?

配偶者や子などに一定額の財産を相続することを保障するもの。

民法で規定されており、遺族の生活保障や相続人間の最低限の公平の確保が目的で、分配された財産がこの遺留分を下回った場合は、多く受け取った者から取り戻すことができる。

(遺留分減殺請求)

では、この遺留分に関する民法特例はどのように使うのでしょうか?

   社長

長女    長男(後継者)   次女

 

 都内のA工業のケースです。

社長は長男に事業承継をし、自社株を譲って自社の経営から引退しようと思っていました。

しかし、長男に民法の遺留分の評価時点が生前贈与時でなく相続発生時であることから、経営を引き継いで一生懸命頑張って会社の価値を上げても、その分遺留分で他の兄弟に持っていかれてしまうのではやる気がでないのではないかという心配をされていました。

では遺留分が事業承継の障害とならないような方法はないでしょうか?

◎遺留分の放棄を検討

遺留分の放棄は放棄者が裁判所に出頭しなければならないことから、放棄するのにわざわざ裁判所まで行って面倒な手続きを踏んでくれないという問題がありました。

そこで、後継者1人で上記の問題を解決できるようにすることで、事業承継を円滑に進めることを目的として、中小企業経営承継円滑化法が制定され、同法は、平成21年3月1日に全面施行されました。

  A工業のケースでは、事業承継時に遺産として、2000万円の評価の不動産と1000万円の預金、3000万円の評価の自社株があるとします。そして、相続人は、後継者とする長男以外に、長女、次女の2名がいるとします。

  これまでは、長男が自社株を譲り受けた後、発奮して自社株の価値を1億円まで高めたとしても、遺留分の評価は2000万円+1000万円+1億円=1億3000万円を基礎として算定されてしまうことから、長女及び次女から遺留分の請求があれば、それぞれ6分の1の2166万円ずつを渡さなければなりませんでした。

長男が発奮せず自社株の価値が3000万円のままであれば、2000万円+1000万円+3000万円=6000万円を基礎とするので、長女及び次女の遺留分はそれぞれ1000万円ずつであったにもかかわらずです。

これでは、頑張った分、他の兄弟に渡すことになり、長男のやる気がでないといえるでしょう。

長男が事業承継しなければ、自社株の価値はむしろ大幅に減少していたかもしれません。

このように、事業承継にあたって、遺留分制度の存在により、後継者のやる気を削ぐことのないよう、手当をする必要がありました。

【円滑化法では、以下の二通りの方法を選択することができます】

①固定合意による方法

弁護士や公認会計士等から相当な価額であるとの証明を得て、合意した価額に評価を固定します。合意後相続開始時までに株式の価額が上昇しても下落しても遺留分算定の際には合意した価額で計算するという方法です。

②除外合意による方法

生前贈与した株式を遺留分算定の基礎財産から除外する旨の合意を行います。株式以外の財産については、固定合意による方法はとれず、この方法のみが可能です。後継者の経営努力によって価値が上下するという関係に一般的にはないからです。

このような固定合意ないし除外合意を推定相続人全員の間で、書面により行い、経済産業大臣の確認を経て、家庭裁判所の許可を申請します。

家庭裁判所では、真意に基づく合意かどうかがチェックされ、その際には、後継者以外の推定相続人に対し分け前を与えて配慮しているかどうかなどが考慮されることになります(例えば、除外合意を行っているにもかかわらず、全く分け前がないのであれば、真意に基づかない可能性が高いのではないかとの考えに基づきます。)。

 

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