⑥ インフレ率2%の達成の必要性

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さて、こうしてみてくるとインフレ率2%目標を立てた金融緩和による景気回復は道半ばと言えますが、このインフレ率2%の必要性について考えてみたいと思います。
先ほども少し述べましたが、住宅ローンがある世帯にとっては、給料が下がれば返済負担が重くなり、給料が上がれば返済負担は軽くなります。たとえ物価が上がって実質給料の金額は変わらなかったとしても、過去に契約した借入金の返済額は変わらないので、給料の総額が増えれば返済負担は減っていくのです。
では、これを国に置き換えて考えてもらえれば、インフレ率2%の必要性が見えてくると思います。
これは「アベノミクスは進化する」の中に書かれているのですが、デフレが財政赤字を招くのか?ということについて検証をしています。
1995年から2015年までの20年間において、日本の労働生産性の向上は他国とほぼ同等の年率1.47%程度であるが、この間のデフレによりGDPはほとんど増えていない。1988年以降複数年にわたり生産年齢人口が減少したのはOECDの中で11カ国あるが、デフレとなったのは日本のみである。
日本は1990年代半ば以降長期化したデフレへの対処が不十分、つまり、戦後の物不足と国債の濫発によりスーパーインフレを経験した日銀は、インフレを抑えることに熱心でデフレを克服することには不十分であった。このため、デフレと税収の減少を招き、それが財政赤字を拡大させたことは明らかだとしている。
一時的な歳出抑制で財政赤字は減らせたとしても、デフレが和らぐことで実現した税収増と比べれば極めて限定的といえる。
これは、個人で言う住宅ローンとインフレによる返済負担の減少と同じで、インフレと経済成長がおこり、名目GDPが3%増えていれば、公的債務の持続性の観点からは財政状況は健全化すると言える。
つまり、国債残高のGDP比率が日本は230%(2016年)と言われているが、分母である名目GDPが増加すれば、国債のGDP比率は下がると言える。
バーナンキ前FRB長官は「物価上昇率と政策金利が2%になれば、政府債務のGDP比率は10年間で21%減少する」と言っています。
また、緩やかなインフレが起こると、所得税の超過累進課税制度によって、自然と賃金が増えた人の税率が上がり、税収が増える効果がある。また、緩やかなインフレという普通の安協であれば社会保障制度において歳出を抑えるメカニズムが機能する。さらに、緩やかなインフレ環境では歳出規模全体も自然に増やせるので、歳出の組み替えも起こりやすい、などの利点もあります。
米英日はいずれもリーマンショック後に財政赤字が大きく増えたが、その後の財政赤字の縮小ペースを見ると、量的緩和強化で名目GDPを回復させた米国と英国で赤字縮小がスムーズに進んでいるという事実もあり、インフレ率2%の目標を達成させるのは非常に大事だと言えるかと思います。

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