⑦ インフレ率2%の実現可能性

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さて、「偽りの経済政策」では、日銀がインフレ率2%の目標を達成できずに、何度もその達成時期を延期しているため、異次元金融緩和は失敗だったとしています。
確かに、当初目標の達成ができなかったという点では失敗ですが、その要因の1つにはやはり消費税増税によるマイナス効果が大きいと思います。
2014年の消費税増税時の実質GDPの落ち込みとその後の回復の鈍さは当初の予想をはるかに上回るものでした。インフレは人々がそう信じこむことで、実現をする面もあります。FRB長官や日銀総裁はシャーマンでなくてはならないと言われます。つまり、インフレが起こる、今後、毎年物価は上がると人々に信じ込ませることにより、物価が上がるのであれば今のうちに購入しておこう、と人々が行動を起こし、それが消費を拡大させ、物価の上昇につながる、こうしてインフレが実現をする面もあります。
しかし、20年間デフレが続いていた日本では、インフレなんか起こらないだろう、と考えられていました。デフレ状態、つまり、1年後は物価が下がると人々が思えば、不急・不要のものは急いで買う必要がなく、価格が下がった1年後でいいと、先延ばししてしまう。これが消費を減少させ、さらなるデフレを招くことになる。
こうした悪循環を断ち切るために、日銀は人々の予想を上回る、いい意味で裏切る必要がありました。そこで今までとは全く違う異次元の質的量的金融緩和に着手をしたわけです。これにより、どうせ日本はデフレから抜けられないだろうと思っていた人々に、あれ、もしかして本当にインフレの時代が来るのかもしれない、株もあがってなんか最近景気がいいぞ、と人々のマインドに働きかける効果がありました。
しかし、20年間デフレの状態にあった人々の気持ちを少し上向きかけたところで消費税増税が水を差してしまった。まだ、インフレに慣れきっていない状態での増税は早すぎたと思います。
また、運の悪いことに、2015年中国経済の失速、2016年初めには石油価格の下落によりまた、デフレ状態に逆戻りをしてしまいました。
しかし、人々の心をあっと言わせるような黒田バズーカーはすでに弾切れで、マイナス金利をその後、導入したもののインフレ率2%には程遠い状態が現在まで続いています。つまり、金融緩和によるインフレ率2%の目標の達成には限界が来ているのではないかということになります。

 それではいったいどうすれば、デフレ状態が染みついてしまった日本においてインフレ率2%を達成することができるのでしょうか?
その解となる理論がここ最近注目を集めている「シムズ理論」です。ノーベル経済学賞受賞者で米プリンストン大学のシムズ教授が唱えた理論です。デフレが長引く中では金融政策だけでなく財政支出の拡大が有効であるというもので、デフレ圧力がかかる中では財政の悪化を招いても財政支出を拡大することがデフレからの脱却につながる、というものです。
財政出動で膨らんだ赤字は増税や歳出削減ではなく、物価上昇に伴う税収増と、財政出動による景気の拡大による税収増で賄えるというものです。
物価というのは需要と供給によって決まります。つまり、需要=買いたい人と供給=売りたい人とのバランスで決まります。オークションを想像してもらえればわかりやすいと思いますが、売りたい人が1人で買いたい人が3人いれば、値段は吊り上がっていくのと似たような原理です。
金融緩和というのは日銀が大量の資金を銀行に供給し、金利を下げることによって、借金をしやすい状態を作ることです。金利が下がって借金をしやすい状況、住宅ローンが組みやすい状況になれば、人々は借金や住宅ローンを組んで消費をしやすくなります。
つまり、消費が増える=買いたい人が増えることにより、これが物価の上昇につながるはずでした。ところが、きわめて建設的で慎重な日本人は金利が安くなっても無駄な借金はせず、企業も借金がしやすいからと言って、安易に設備投資をしなかったため、これ以上金融緩和をしてもなかなか物価が上がりずらい状況に陥ってしまいました。
そこで買いたい人を増やすには、民間で買わないのなら国が買うしかない、ということで、財政出動により国が国債を増やしてでも、買い手となることにより、物価上昇に働きかけるということになります。
先ほど検証したようにデフレ状態であることが国債の対GDP比率を高めた要因になっており、逆にインフレ率2%を10年間続ければ、インフレ効果だけで国債対GDP比率は21%減少することになります。ここに、財政出動による景気拡大が加わるので、さらに速いペースで国債対GDP比率を下げることができると考えられます。
このため、最初に国債が増加されてでも、インフレを起こすことに成功し、景気拡大につなげることができれば、国債対GDP比率を下げることにより財政危機に陥ることを避けることができ、財政は健全化に向かうと考えられます。

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